強引上司にさらわれました

「美優、ごめんね。かずくんにも悪いことしちゃった」

「大丈夫だってば。そんなことを言ってる場合じゃないでしょ、泉は」


軽くパーマのかかった栗色の髪をシュシュで緩く横にまとめた美優は、少しだけ厳しい口調で私に言った。
厳しいとはいっても突き放すような言い方じゃなく、母親目線のような感じだ。


「達也くんと連絡は?」


首を横に振った。
連絡を取ろうとも思わなかった。
まだ冷静な気持ちで話せる段階じゃない。


「それにしても本当にびっくりだったよ。まさかあそこで、舞香ちゃんがあんな思い切ったことをするなんて」


美優の言い方が、どことなく引っかかる。


「……舞香ちゃんと達也のこと、なにか知ってたの?」


私の質問に、美優は顔を少しだけ強張らせた。


「えっ、あ、違うよ。ただ、舞香ちゃんが達也くんのことを好きだって噂は聞いたことがあったから」

「え? そんな噂あったの?」

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