強引上司にさらわれました
白石舞香(しらいし まいか)、二十五歳。
達也と同じ、トイ戦略室所属だ。
くりっと猫のように大きな目をした小柄の可愛らしい女性で、部署内の愛されキャラだと達也から聞いたことがある。
容姿も性格も特筆すべき点がひとつもない、普通を絵に描いたような平均点の私とは、タイプが全然違う。
大勢の女の人が集合写真を撮るために集まったとしたら、同化してしまって絶対に目立たないタイプの私と、必ず目を引くタイプの舞香ちゃん。
アイドルグループの中にいたとしたら、センターで歌うのはきっと彼女だ。
そんな彼女が、いったいどうしたんだろう。
今日の式には招待していなかったはず。
「元木さん!」
しんと静まり返った教会内に、彼女の達也を呼ぶ声が響き渡る。
讃美歌のように透き通った声だった。
彼女の切羽詰まったような顔を見て、嫌な予感が全身を貫く。
「結婚なんて、しないでください!」
咄嗟に、達也の顔を見た。
彼は驚きに目を見開き、彼女のことをじっと見つめている。
なに? なんなの?
「……達也?」
私の呼びかけに、彼は反応すらしない。