強引上司にさらわれました
「これは結果論だけど、入籍する前に発覚したことだけでもよかったと思うよ」
入籍、か……。
婚姻届けは、新婚旅行から帰った足で行こうとふたりで決めていた。
結婚準備から新婚旅行が終わるまでは、夢の時間。
いつまでもふわふわした気分ではいられない。
現実に結婚生活が始まるきっかけに、ふたりで決意も新たに入籍しようと。
だから、昨日あんな事態にはなったけれど、私の戸籍に傷はつかないのだ。
でも、こうも考えられないだろうか。
前もって入籍していたら、達也は踏みとどまったかもしれない、と。
「しばらく特別休暇を取ってるんだよね?」
「うん……。十日間は」
「それじゃ、その間に今後のことを考えると――」
「ううん。そんな悠長なことは言っていられない」
美優の言葉を遮る。
「私、明日から会社に行くよ」
「え!?」
美優は二重の瞼をさらに見開いて私を見た。