強引上司にさらわれました
◇◇◇
美優とふたりでキムチ鍋をつつき、私の前途を祈ってビールで乾杯。
思い返してみれば、こうしてふたりで夜ご飯を一緒に食べるのはずいぶんと久しぶりだ。
というのも、美優がかずくんと同棲を始めてしまったから。
美優は、宿直があったりする彼のサポートを献身的にしているのだ。
鍋の準備をしている間は、旅行会社へキャンセルの電話を入れたり、お母さんからの電話が入ったりと、なかなか忙しかった。
出発直前のキャンセルだけに、料金は百パーセント負担。
もちろん、それはすべて達也に払ってもらうつもりだ。
「やっぱり冬は鍋だよね」
「うん、特にキムチは体があったまるしね」
そんなことを話しながら、美優がビールのおかわりを冷蔵庫に取りに行ったときだった。
玄関のドアが開けられると同時に、「美優ちゃん!」と声が上がる。
かずくんだった。
「どうしたの!?」
美優が驚いて玄関に急ぐ。
「やっぱり無理だよ、俺!」
「無理って?」