強引上司にさらわれました
「美優ちゃんと離れて眠れない!」
……え?
玄関から聞こえてきたふたりのやり取りに、一瞬だけ思考が停止する。
かずくんって、そんなキャラだったの?
何度も会ったことはあったけど、そこまで年下キャラ全開には見えなかった。
しばらくすると半開きになっていたリビングのドアから、美優に連れられて肩をすくめながらかずくんが入って来た。
「こんばんは」
私の挨拶に遠慮がちに頭を下げる。
「ごめん、泉。かずくんがね……」
「いいの、美優。無理を言って押しかけたのは私のほうだし。かずくんを追い出すことが間違ってたんだから」
申し訳なさそうに美優が言うものだから、慌ててフォローする。
そもそも、同棲中のところにお世話になろうというのがいけなかった。
「狭いけど、ちょっとの間なら三人でも大丈夫だから」
無茶苦茶なことを言う美優の隣で、かずくんが何度も頷く。