強引上司にさらわれました
「やだ、そんなことできないよ。私なら大丈夫。なんとかするから」
食べかけになっていたキムチ鍋の取り皿を片付ける真似をして、自分の荷物を大急ぎでまとめる。
三人で一緒になんて、さすがに無理だ。
「え、でも」
「泉さん、いてくださいよ」
ふたりは引き留めてくれたけれど、本当にそれはできない。
美優と離れて眠れないと宣言するくらいなのだから、夜になったらふたりはひとつのベッド。
そのすぐそばで眠るなんて、いくら達也の二股を見破れなかった鈍感な私でも、神経はそこまで太くない。
「本当に平気だから。ごめんね、無理言って押しかけたりして」
まとめた荷物を持ち、そそくさとふたりの部屋を出た。
玄関のドアがパタンと閉まり、そこで大きく息を吐く。
さて、困ったな……。
午後七時半。
こんな時間から、どうやって住むところを探せるというのか。
大丈夫だと啖呵を切って出てきたはいいものの、そんな保証はどこにもない。