強引上司にさらわれました
◇◇◇
電車を乗り継ぐこと三十分。
スマホの地図アプリで確認しながら、ようやく課長の住むマンションにたどり着いた。
ダークグレーの地上五階建て。
ここからなら徒歩も計算に入れて、会社まで三十分ほどで行けそうだ。
課長の部屋は五〇七号室か……。
メモをもう一度見て建物を見上げる。
あの朝倉課長と仕事でもプライベートでも一緒なんて、私には耐えられるだろうか。
ここまで来てしまったくせに、お世話になろうという決意がぐらつく。
うーん……どうしよう……。
課長との共同生活と漫画喫茶の振り子が大きく揺れる。
――やっぱりやめた。
絶対無理だ。
クルリと踵を返したときだった。
ドンという衝撃が私の体に襲い掛かる。
背中から肩にかけて、なにかにぶつかったのだ。
「……麻宮?」
見上げれば、そこには目を見開いた朝倉課長が立っていた。
「――か、課長!」
「諦めて来たか」
「あ、ち、違うんです。たまたま通りがかっただけで」