強引上司にさらわれました
「あなた、さっきからそこで中を窺うようにしていたけど、いったいなんの用事かしら」
「え? あ、あの……」
上半身をのけ反らせながら、課長に目で助けを求める。
「管理人さん、すみません。妹なんです」
……え? 妹?
課長の受け答えに呆気に取られる。
「妹って、朝倉さんのかい?」
「そうなんです。しばらくうちに泊めますのでよろしくお願いします」
「あ、えっと……あ、兄がいつもお世話になっております……」
課長に口裏を合わせて、おずおずと頭を下げる。
管理人さんは課長と私の顔をまじまじと見つめ、「似てないねぇ」とポツリと呟いた。
確かに、似ているところはどこもない。
それどころか美男のお兄さんにして、この妹の普通さといったらない、というところだろう。
どこか怪しむような目つきの管理人さんから逃れるように、課長のうしろへと回り込む。
「管理人の伊藤麗子さんだ」