強引上司にさらわれました

「綺麗の“麗”」


紹介してくれた課長に、すかさず管理人さんが付け加える。


「はぁ」


気のない返事をした私が気に食わなかったのか、管理人さんが「なんだい、文句があるのかい?」とツッコミを入れる。


「い、いえっ、ピッタリですね……」


慌てて訂正して背中を丸めた。


「管理人さん、妹の泉です」


今度は私が紹介されて、「よろしくお願いします」とペコリと頭を下げた。


「朝倉さんは妹がふたりもいるんだね」

「え? あ、いえ……」


課長に妹なんかいたっけ?
そんな話は聞いたことがないけど。


「行くぞ」


管理人さんに適当に相槌を打ち、課長はスーツケースを引いていないほうの手で私の背中を押した。

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