強引上司にさらわれました

「ちぇっ、ひどいよな」


椅子の背もたれに体を預けて、野沢くんは不満顔だ。


「野沢の能力が低いとは思わないぞ」

「――ほ、ほんとですか!?」


ピョンと飛び跳ねんばかりに、野沢くんは課長に食らいついた。


「まぁ確かに、仕事が期日ギリギリのことはあるけどな」


チクリと言い含めることも忘れないとは、さすがは課長だ。


「話が脱線したが、レベルの高い学生を集める方策を少し考えてほしい」


課長が仕切り直す。

今この場ですぐに意見が出るような内容じゃない。
三人とも黙り込んでしまった。

課長は私たちひとりひとりをゆっくり順番に見て、“なにか出せ”と念を送ってよこす。
こうなると、課長は意見が出るまで諦めない。
お昼になろうが、退勤時間になろうが、お構いなしなのだ。

ここでひとかたまりになって頭を抱えていたところで、アイディアが出るとは思えないのだけど。

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