強引上司にさらわれました

特に今日は勘弁してほしい。
なんせ朝ごはんを食べていないのだ。

コーヒー一杯だけのカロリーは、課長のマンションから駅まで歩くうちに消費してしまった。
会社に着いたら、すぐにデスクに隠し持ったお菓子を食べようと画策していたのに、すぐに始まったミーティングがそれを阻止。
これでお昼の時間までずれたら、私は飢えて死んでしまう。

なんとかひとつだけでも意見を言わなければ……。

悶々と過ぎていく時間。
課長は背中を椅子にもたれかけさせ、腕組みで私たちの様子を見守る体勢を貫いている。

最初からレベルの高い学生に来てもらうにはどうしたら……?

村瀬さん、なにか思いついてくれないかな……。
いや、意外とこういうアイディアを出せるのは、野沢くんかもしれない。

そんなことを片隅で考えながら、空腹による胃痛に身悶えつつ懸命に頭を働かせる。

どうせなら、コーヒーをもう一杯飲んでおけばよかった。

……そうだ。
こういうのはどうだろう。


「あの、課長」


みんなが考え込んで二十分ほどが経ったところで、初めて私が声を発した。

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