強引上司にさらわれました
「能力の高い学生に入社してほしいのなら、会社説明会のときに研修みたいなものをしてはいかがでしょうか」
「え? 入社もしていないのに研修?」
村瀬さんと野沢くんが揃って首を傾げる。
やっぱりおかしな発想か。
言わなければよかったと後悔し始めたところで、課長が口を開いた。
「もう少し詳しく話してくれないか」
「えっ、あ、はい……。当社が求める人材を学生のみなさんに体験してもらうといいますか」
「うちの求めているのって、どういう人材なんですかぁ?」
野沢くんが話を遮る。
人事に所属していながら、自分の会社が求める人材を理解していないとは……。
さすがは野沢くんだ。
課長も村瀬さんも、これには苦笑いだった。
「いいか、よく覚えておくんだぞ。柔軟性、発想力、チャレンジ精神、顧客志向。以上の四つだ」
村瀬さんの説明に課長と私はうなずいた。
「なるほど。オモチャを作る会社ですもんね。言われてみればそうですね」
本当に分かってくれたんだろうか。
野沢くんは深く唸った。