強引上司にさらわれました
「麻宮、続けてくれ」
課長は先を促した。
「潜在能力の高い学生は、自身の能力を高めたいと思っているはずです。そうした学生を集めるためには、その機会を提供することをアナウンスすればいいのではと考えました」
言葉を選びながらゆっくり説明する。
ついさっき思い浮かんだことだけに、奥深いところまでは正直考えていない。
パッと思いついたことを言ってみただけのこと。
それもこれも、この空腹を救うためにほかならない。
今にもグウと豪快な音を立ててしまいそうで、お腹に神経が集中してしまう。
課長は腕組みで一点を見つめながらしばらく考え込んだあと、顔を上げた。
「従来の方法だと、エントリーシートや面接で能力を見極めてきたんだが、今までの経験からすると、それにも限界があると思ってはいたんだ。うちの求める人材はこうであってほしいと説明会でいくら案内したところで、その効果は限られている」
「ですので、学生の母集団の潜在能力を高めればいいのでは、と思ったのです」
課長の言葉にひと言添える。
会社説明会で研修なんて聞いたことはない。
入社してから新人教育をする会社がほとんどだし、入社するかどうかもわからない学生に研修なんて馬鹿げていると一蹴されるかもしれない。