強引上司にさらわれました
「あ、でも、もしかしたら私のほうが帰りは遅くなるかもしれません」
「どこか寄ってくのか」
「はい……彼の部屋に荷物を取りに行かないとならないので……」
洋服も靴も、生活していく上で必要な身の回りのものを回収しないとならない。
課長は鍵を持ったまま、しばらく視線を彷徨わせた。
「それなら車があったほうがいいだろ」
「はい?」
「定時であがるようにするから、一旦マンションへ帰って車で向かえばいい」
「いえいえ、私、ペーパードライバーですので」
両手を胸の前で振って大々的に拒否をする。
課長から車を借りるなんてとんでもない。
「俺が運転するに決まってるだろ」
「……へ?」
課長が、荷物回収に付き合ってくれる……?
「いやいやいやいや……。そういうわけにはいきません」
部屋に置いてもらえるだけでありがたいというのに、荷物を回収するために車を出してもらうだなんて。