強引上司にさらわれました
そこまでしてもらう義理もない。
「身ひとつで行って、持ち帰れる量なのか」
運び込んだ荷物を思い返す。
持ち帰れる……か……?
うわっ……ざっと段ボール十箱はある。
遠慮がちに首を横に振った。
「ほれみろ」
「ですから、何度か往復して……」
「そんな効率の悪いことをするつもりか」
「ですが……」
そこまで課長の手を煩わせていいものか。
「人の好意はありがたく受け取れ」
課長は鍵をもう一度ポケットにしまい込むと、「じゃ、そういうことだ」とデスクへ戻ってしまった。