強引上司にさらわれました

◇◇◇

学生向けの研修か……。
どんなものがいいんだろう。

自分で提案しておきながら、具体的な案がまったく浮かばない。
ミーティングが終了してからかれこれ一時間は経っているのに、企画書は真っ白のまま。

気難しい顔をしてディスプレイを睨んでいると、隣から野沢くんが「大丈夫ですか?」と声を掛けてきた。


「大丈夫……じゃない」

「とかいって、すんごい企画書が頭の中に出来上がってるんじゃないですか?」

「そうだといいんだけどね……」


正真正銘のまっさらだ。
課長に至急だと言われているから、早いところ提出したいのだけど。


「なんかこう、遊び心なんてのもあると、管理監督する立場の俺も楽しいんですけどね。ほら、研修っていうと堅苦しいイメージがありますから」


……遊び心?
そっか。うちは玩具メーカーだ。

どうも研修というと、こちらから一方的になにかを発信するものをイメージしてしまうけれど、それじゃ説明会となんら変わらない。
玩具メーカーならではのものでなければ意味がないのだ。


「野沢くん、ありがとう!」

「へ? なんですか? 俺、なにか言いました?」


ポカンとする野沢くんにお礼を言うと、いざキーボードを叩き始めた。

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