強引上司にさらわれました

◇◇◇

「課長、できました」


その企画書が一応の完成を見たのは、お昼まであともう少しというときだった。

パソコンに向かっていた課長は、印刷したものをすぐに確認し始めた。
数枚にわかれた文書をじっくり読んでいく。


「最初の講義はいいとして、“竹とんぼ作り”……?」


課長はその項目で目を留めた。

野沢くんは堅苦しいと言っていたけれど、やはり会社の求める人材について座学で触れることはどうしても外せない。


「講義だけだと会社からの一方通行になってしまうので、講義が終了したあとはいくつかの班にわかれて、竹とんぼ作りをしてみてはどうかと」


竹とんぼといえば、玩具の基礎。
それを作成することで、うちが求める“柔軟性、発想力、チャレンジ精神、顧客志向”とはどういうことかを体感してもらい、より質の高い学生を集められると思ったのだ。
そうすることで、選考に進む学生のレベルを上げることはできないだろうかと。

課長は次々とページをめくり、私の企画書を読み込んでいった。
そして最後まで読み終えると企画書をデスク上でトンと音を立てて揃え、「よし、これでいこう」とうなずいた。


「……大丈夫ですか? それで」

「なんで出した本人が不安になってるんだよ」

「本当にいいのかなぁ、と」

「俺がゴーサインを出したんだ。いいに決まってる」


頼もしい言葉が後押し。
課長は、野沢くんと村瀬さんを呼び寄せ、ミーティングで話したように各方面への手配を指示した。

< 63 / 221 >

この作品をシェア

pagetop