強引上司にさらわれました
◇◇◇
社員食堂へ向かいながら、私のお腹は飢えに飢えてキュルキュルと鳴いている。
早いところご飯を食べないと、それこそお腹と背中がくっついてしまいそうだ。
最上階である十五階にある社員食堂へ着くと、すでに長蛇の列ができていた。
「泉! 泉!」
私を呼ぶ声に辺りを見渡していると、近くにいた社員たちから好奇の眼差しが向けられた。
そのどれもが憐みを浮かべているから嫌になる。
一昨日のことだというのに、すでに全社員に知れ渡っているに違いない。
そういう話は、光の速度さえ超えてしまうのだ。
「泉ってば!」
そんなに大声で呼ばなくてもいいのに。
視線を集めたくないという私の思いを知らない美優は、「聞こえなかった?」と言いながら私の元までやってきた。
「あそこに席を取ってあるから」
そう言うなり、くるっと踵を返す。
そして、席に着くと私に向かって手を振って見せた。
列の最後尾に並び、日替わり定食をゲットして美優の前の席へ腰を下ろした。