強引上司にさらわれました
朝倉家のタイムスケジュール


お昼休みから戻るとすぐに、村瀬さんと野沢くんと私の三人で手分けして大学やエントリーした学生への案内、ホームページへの明記を済ませると、退勤時間の午後五時半はあっという間に訪れた。

部署のみんなに「お先に失礼します」と部屋を出ると、そのすぐあとから課長も出てきた。

課長の部屋にお世話になっていることは、ばれてはならない。
そんなことが公になったら、結婚式で新郎に逃げられた途端、別の男に乗り換えたのかと陰口を叩かれるに違いないから。
新郎が逃げたのは、そういう理由もあるからじゃないか、なんて痛くもない腹をさぐられるのがオチ。

そしてなにより、その悪い噂に課長も引きずり込んでしまうのは絶対にいやなのだ。

ほかの人の目もあるので、課長のマンションの最寄駅まではある程度の距離を保って帰った。


「あらま、帰りまで一緒なの?」


マンションのエントランスで会った管理人さんに、こちらがドキッとする質問を浴びせられた。
おまけに、地下一階にある駐車場から課長が車を出してくると、「兄妹でお出掛け?」と、どこか怪しむような目を向ける。


「あ、はい、ちょっと……」


作り笑いを浮かべて返すと、「仲が良くていいわねぇ」と管理人さんは含ませたように笑った。

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