強引上司にさらわれました
課長の車は白いセダンだった。
車に詳しいほうではないけれど、たぶん高級車の部類だ。
ピカピカに磨かれているところは、きっちりしている課長らしい。
助手席に乗り込んでおおまかな住所を告げると、車はゆっくり発進した。
「ひとつ言い忘れていたことがある」
邪魔にならない程度に掛けられた洋楽のCDに聴き入っていると、課長が不意に口を開いた。
「実は俺、朝が弱いんだ」
「――知ってます」
間髪容れずに返す。
何を今さら。
今朝の課長を見ていれば一目瞭然だ。
目覚まし時計を九個も使って、全然起きないのだから。
課長の部屋が角部屋だからいいものの、そうじゃなかったらお隣さんから絶対に苦情がくるだろう。
できれば、その情報は昨夜のうちに聞いておきたかったというのが本音だ。
今朝は、心臓がひっくり返るほどに驚かされてしまった。
「なら話は早い」
「なんでしょうか」
「明日から毎朝、起こしてもらいたい」