強引上司にさらわれました

「……なんだ、そんなことですか」


なにを言われるのかと思えば。


「あ、それじゃ、あの目覚まし時計はセットしないでください」


あの騒音で目覚める朝は最悪だから。


「麻宮が起こしてくれれば、セットする必要はない」


かえって好都合だ。


「それにしても朝が苦手なんて、ちょっと意外ですね」

「どう意外なんだ」

「仕事はなんだってそつなくこなすので、私生活もピシッとしているのかと」

「それがわかっていれば、話はなお早い」


赤信号で車が停まると、課長は胸ポケットから折りたたまれた紙を取り出した。
それを私に突き出す。


「……なんですか?」

「我が家のタイムスケジュールだ」

「……はい?」

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