強引上司にさらわれました
◇◇◇
バッグのポケットにしまい込んできた達也の部屋のカギを取り出す。
玄関の前のドアに立って、中の様子を窺うように耳を当てた。
……中に達也がいたらどうしよう。
舞香ちゃんも一緒だったら嫌だな……。
「なにをしてる」
私の気持ちなどお構いなしの課長は、普通の声のトーンで私を急かした。
そんな声でしゃべったら、中に聞こえるだろうに。
「早く開けろ」
「分かってますってば」
そっとカギを挿し込み、ゆっくり回す。
それでもカチャッと音がしてヒヤリとした。
コソ泥にでもなった気分だ。
どうか誰もいませんように……。
意を決して静かにドアを開けると、中はひっそりとしていた。
電気も点いていない。
……よかった。
ひとまず第一関門は切り抜けた。
誰もいないと分かった途端、気が大きくなる。
電気を点けて、ズカズカと上がり込んだ。