強引上司にさらわれました
「これ全部か?」
「はい」
課長に一緒に来てもらってよかった。
こんな場所に何度も足を運ぶなんて、私にはできない。
「重いのは俺が運ぶから、麻宮は軽いのを選んで運べ」
課長は重そうなものから選んで抱えると、早速部屋から運び出しを開始した。
ふたりで何往復かして全てを車に詰め込むと、トランクも後部座席もいっぱいになるほどだった。
テーブルに達也からもらった婚約指輪と交換したばかりの結婚指輪を置き、カギは郵便受けに入れて車に乗り込む。
これでひとまず終わった……。
ふぅと長く息を吐き出すと、課長は「お疲れ様」と声を掛けてくれた。
「なにか食べてくか」
「……あ、そうですね」
もうすぐ午後八時だ。
課長のタイムスケジュールによると、夕食の時間になる。
「ラーメンでもいいか?」
「……ラーメン?」
思わず聞き返す。
「嫌か」
「違います。大好きです」
ただ、課長の口からラーメンが出てくるとは思いもしなかったのだ。
私の勝手な思い込みだけど、課長はおしゃれなレストラン系しか行かないイメージだ。
「それじゃ決まりだな。マンションの近くに旨い店があるから、車を一旦置いてからにしよう」
課長の言葉にうなずいた。