強引上司にさらわれました

「課長はなににするんですか?」

「朝倉ちゃんはいつものだろう?」


聞いたそばから、課長ではなく店主が答える。


「そうですね。いつものでお願いします。それからヤスさん特製の餃子も」


“いつもの”ってなんだろう。
“ヤスさん”って、この人のこと?

……まいっか。
課長の定番を頼めば失敗しないだろう。


「私もそれでお願いします」

「オッケー。メン二丁、餃子二丁!」

「メン二丁、餃子二丁!」


店主のひと声にほかのスタッフが繰り返した。
ずいぶんと威勢のいいお店だ。


「ビールでも飲むか」

「ビールですか?」


私が「はい」とうなずくより早く、課長はビールもふたつ追加した。
すぐに運ばれてきた中ジョッキで軽く乾杯する。


「お疲れ」

< 75 / 221 >

この作品をシェア

pagetop