強引上司にさらわれました
ラーメンはいつ作ってくれるのかと心配していたら、お弟子さんと思しき人がせっせと麺を茹でていた。
「へい、お待ち!」
そうして出されたのは、ワンタンメンだった。
これが朝倉課長の定番メニューらしい。
麺が見えないほどにワンタンが覆い尽くしている。
いい香りに誘われるようにレンゲでスープをすくった。
「……おいしい」
鶏ガラのような煮干しのような。
飲んだことのないスープだった。
病み付きになりそう。
「だろ?」
私の感想に課長もなんだか得意気だった。
そういえば、達也ともよくラーメンを食べに行ったっけ。
達也は豚骨が好きで、おいしいと評判の店があれば、多少遠くても一緒に行ったものだった。
もう、そんなこともなくなるのか……。
――って、感傷的になってどうする。
達也との思い出を弾き飛ばすつもりで、ビールジョッキを一気に空にした。