強引上司にさらわれました
「おかわりください」
店主にジョッキを突き出す。
「おい、そんなに飲んで大丈夫か?」
心配そうにする課長に「もちろんです。これでも、お酒は強いほうですから」と胸を張ってみせた。
餃子とラーメンがおいしいからか。
それとも、忌々しい結婚式の記憶を消したいからか。
次から次へとジョッキを空にしていき、自分でも何杯飲んだのかわからなくなるほどだった。
おかげで頭はボーっとするし、瞼も重い。
課長がなにかを言っているようだけど、遥か遠くから聞こえてくるようだった。
ふと、体が引き上げられるような感覚がして、どこからか「ありがとうございました!」という声が聞こえた。
足がもつれているのはわかったけれど、腰をがっちりと押さえられているおかげか、なんとか歩けているようだ。
冷たい夜風が頬をくすぐったかと思ったら、「あらまぁ、大丈夫かい?」という女性の声がする。
この声は……管理人さん……?
挨拶をしなくちゃと思いつつ、目が開けられない。
もしかして私、課長に抱きかかえられて歩いてるんじゃないだろうか。
そう思い当たっても、接着剤でくっつけられたように瞼は開かなかった。