強引上司にさらわれました
「課長、寝ないんですか?」
「酔っ払いを放って眠るわけにはいかないだろう」
「すっ、すみません! ――ひゃあっ!」
もう一度土下座したところでバランスを崩してしまい、ソファから床へ転げ落ちた。
左半身が地味に痛い。
「ほんと世話のかかるヤツだな」
痛みを感じるくらいにお酒の効果は薄れているというのに、体の自由は利かないときている。
課長に手を貸してもらって、私はやっと起き上がることができた。
「……重ね重ね、ありがとうございます」
情けないな、ほんとに。
顔を上げると、すぐそばには優しい眼差しの課長の顔があった。
たいてい無表情や厳しい顔をしていることが多い課長だけに、そんな目を向けられて動揺せずにはいられない。
ドキッとしたことを悟られたくなくて咄嗟に目を逸らす。
不自然きわまりない。
「あ、あの……シャワー浴びてきます!」
そう言って、そこから離れることに成功した。