強引上司にさらわれました
「課長」
声を何倍にも大きくして、耳元に口を近づける。
山頂で「ヤッホー」と叫ぶように口元に両手を当てて、もう一度「課長、朝ですよー!」と大声で言ってみた。
すると、ゴロンと課長の体がこちら側に回転。
上方から振り落とすような格好になった課長の腕に、私の体は巻き込まれてしまった。
「――か、課長!」
上半身だけベッドに突っ伏す。
今にも唇が触れ合ってしまいそうなほど近くにある課長の顔。
こんな状態になってもなお、目が開けられる様子は微塵もない。
私の首根っこごと、課長が枕の下に腕を突っ込んでいるものだから、私の身動きは封じ込められていた。
こうなったら……。
自由の利く左手を布団の中に忍ばせる。
脇腹をくすぐってしまおうと思ったのだ。
ところが、課長の体の感触に咄嗟に手を引っ込める。
――そうだった! 裸だよ!
昨日の朝見た課長の裸体を思い出して、カーッと顔が熱くなる。
ものすごく引き締まった体だったな……。
――って、私はヘンタイか。