強引上司にさらわれました
「この皿は?」
スーツに着替えてダイニングテーブルに着いた課長は、目玉焼きを乗せた薄皿を指差した。
「昨夜はすみませんでした。段ボールを全部運び入れてくださったんですね」
リビングの片隅に、達也の部屋から回収してきた段ボールが置かれていることに気づいたのは今朝のことだった。
酔って眠っている私の代わりに、課長がひとりで全部運んでくれたのだ。
「その皿は、結婚してから使おうと用意したものだったんです。せっかくだから使おうかなと」
結構高かったし、そのまましまっておくのはもったいない。
達也と一緒に買ったものだけど、慰謝料の一部としてもらってきてしまったのだ。
ところが、課長の顔がにわかに曇る。
眉間にしわを寄せて、ジッと皿を見据えていた。
「どうしたんですか? 目玉焼きが気に入らなかったですか?」
「……縁起が悪い」
「はい?」
「その皿はやめておけ」