強引上司にさらわれました
「それでは、潜在能力の高い学生を集めるのにはちょっと不十分だ」
確かにそうかもしれない。
研修だと銘打って竹とんぼを作って遊ぶなんて、お気楽な会社だと思う学生もいるかもしれない。
かえって能力の高い学生を逃してしまいかねない。
「玩具作りも利益を生まなければ会社が立ち行かなくなる。そこで、ただ作るだけではなくて、材料コスト、性能、デザイン、そういったものも考えて作成するというのはどうだろう。学生を少人数のグループ分けにして、ちょっとした競争をさせるんだ」
作るだけではなく、玩具をより追求させる。
それでこそ、うちの求める“柔軟性、発想力、チャレンジ精神、顧客志向”を体感できるというわけだ。
「さすが課長……」
感嘆のため息を漏らすと、課長は「いいのか悪いのか、どっちだ」と少し意地悪な顔をして私を見た。
「いいです! 素晴らしいです!」
課長から手渡された用紙の端がグチャグチャになるくらいに握り締め、その手を振った。
課長の言うとおりだ。
私が提案しただけの研修じゃ、失策に終わっていたに違いない。