強引上司にさらわれました
「よし、麻宮のオッケーも出たことだし、これでいこう」
「はい!」
思わず大きな声で返事をすると、課長はやわらかく微笑んだ。
見たこともない表情に、意図せず胸が高鳴る。
もちろん、笑顔を見たことがないというわけじゃない。
でもなんだろうか。
いい表現が見つからないけれど、花がフワッと開いたようというか。
とにかくやわらかい笑みだったのだ。
今朝、課長のベッドで抱きしめられたハプニングを思い出してしまった。
あからさまな不自然さで目を逸らす。
「さてと、昼でも行くか」
課長の言葉で我に返る。
周りを見てみれば、人事部内は私たちだけ。
みんなすでにお昼に出掛けてしまったようだった。
立ち上がった課長に同行する格好でついて行く。
社員食堂へ着けば、きっと席はばらけるだろう。
そう予測していたのに、日替わり定食のトレーを持ってウロウロしていると、「ここにするか」と課長に席を案内されてしまった。
見ればそこは、壁に向かってテーブルが配置されたカウンター席だ。
ちょうど端に二席空いている。