強引上司にさらわれました
「ほんとですか?」
「普段、あんまり自炊しないからな」
だろうな。
冷蔵庫の中身を見ればうなずける。
今朝も、玉子とベーコンくらいしかなかった。
「それじゃ、そうさせてもらいますね。今日の帰りにスーパーで買物していきます」
「付き合うよ」
「……はい?」
付き合うって……買物に?
「どこにスーパーがあるかわからないだろ」
「え? あ、まぁ、そうですけど……」
スマホで検索すれば見つからなくもない。
「ひとりじゃ荷物も大変だ」
「……一気にたくさん買わなければ大丈夫かと」
課長の手をこれ以上わずらわせるわけにもいかない。
「できるだけ早く上がれるようにするから」
課長の中では、買物に行くことが予定に組み込まれてしまったようだ。
こうなると、私がなにを言おうが無駄だろう。
なんせ、私生活までタイムスケジュールを組むような人なのだ。
一度予定したことは必ず実行すると見える。
「よろしくお願いします」
頭を軽く下げて、いざハンバーグを口に運んだ。