強引上司にさらわれました

「悪い。待たせたな」


そう言ってコーヒーショップに現れた課長は、呼吸ひとつ乱れていなかった。
いつの間に整えたんだろう。


「慌てなくても大丈夫ですよ」


私が言うと、課長はその席から駅前が一望できることを瞬時に悟ってたじろいだ。


「……見てたのか」

「はい、バッチリと」


照れ臭いのか、課長は眉間にしわを寄せて「行くぞ」と私に背を向けた。


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