強引上司にさらわれました

◇◇◇

そのスーパーはコーヒーショップから歩いて五分のところにあった。
課長のマンションへの道のりとは、少し外れている。
中へ入るとすぐに、課長はカゴを持ってくれた。


「なにか食べたいものはありますか?」


野菜コーナーの前を歩きながら尋ねる。


「そうだな……。カレーはずいぶんと食べてない」

「それじゃ、カレーにします。……あ、キーマカレーは苦手ですか?」

「いや。インド料理は好きだ」


あっさりとメニューが決まってホッとする。
なんでもいいと言われると、好みを知らない相手では正直困ってしまうから。

玉ねぎ、人参、ひき肉、ニンニク、トマト缶……。
材料を次々とカゴに入れていく。


「調味料はいらないのか?」

「あ、そうですよね。コリアンダーとか置いてあるかな……」


調味料コーナーへ行き、ずらりと並んだ瓶を見ていく。


「これか?」

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