降りかかった最悪で最低なstory
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脚本家というのは、キャスティングが良くても悪くても、視聴者に納得させるだけのストーリーが描けなければ、用無しだ。


もう十数年もドラマの脚本を書いているが、限界まで想像し得る限りのシーンを練り直して、45分の刻みを、いかにあっという間に感じさせるのか、そして印象を与えるかが重要である。


1クール、つまり10話分を何とか乗り切るために、
今日もスタッフ、監督、役者と共に良い作品に仕上げられるよう、葛藤している。



「藤城さん、俺次どんな感じ?オーディション受けれるかな?」



そんな風に私が真面目に取り組んでいる中、執筆作業を邪魔する輩がいる。



ずいっと横に割り込んで、ぴったりくっつくように、ローラーが付いている椅子を勢いよく転がして、机に肘をつき、こちらの様子など構わず喋り倒してくる。



「ね、聞いてる?次のド、ラ、マのオーディションいつ?」



うざい、最早うざい以外の何物でもない。



「あんたのマネージャーは能無し?こっちからの連絡はとっくにいってるはずだけど。忙しいんだから、邪魔。」



ぶぅー、と何から発せられたのか疑うほどの不快な音が隣から聞こえた。



豚か、豚なのか?私は飼った覚えなどない。



「いーのかっなー、俺にそんなこと言って。もう......ないよ?」



それを聞いた瞬間、奴を思いっきり睨んでやろうとしたら、不意打ちをつかれ、後ろから抱き締められた。



「麗香さん、今日、家行っていいよね?」



甘く耳元で囁きながら、顔を摺り寄せてくる男に、言いたいことは山ほどあったが、これ以上話しても無駄なことを知っている。



もうなす術はなかった。



今日も同じ



また無機質な日々を繰り返す。



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