心臓
「魔女を探しに行く旅、俺も手伝ってやる!」
「……え」
「俺はアンタの力を無効化できる方法を探してる、そしてアンタもまた同じ目的で魔女を探してる!そうなったらもう、一緒に行くのが一番手っ取り早いってもんだろ!」
少年のような笑顔でそう言われて私は呆気にとられる。仲間を見つけた!とでも言うかのような勢いで私に同意を求めてくるが、アオは直様思考を巡らせた。
ここで反対して、今まで通り一人きりで魔女を探す…それもいいだろう。しかしこの帝都に来るまでに私が掴めた手掛かりと言えば、魔女が本当に存在している、という一つの真実のみ。
これでは何年かかるか分からないのも確かである。
これは、腹をくくるしかないかもしれない。
「………私は流れ者。君のように、立派な後ろ盾もない」
「後ろ盾なんてないさ。こんな家を離れて放浪してる人間に、親なんて味方にもつきやしない。…言ったろ、俺はアンタの心臓の力を無効化できればそれでいいんだ」
「魔女が見つかる前に私の心臓を止めようとしたら、私は君を殺すよ?」
「…物騒なこと言うなよ。アンタを殺したいわけじゃない、ただ力自体を失くして欲しいだけだっての!」
その理由はまだ聞かせられていないが、今はまだ話せないということか。……まあいいか、それは。
手のひらを返して苦笑している青年に、アオは暫し沈黙してから手を差し出した。
約束の握手、とでも言っておこうか。
「目的が果たされる日までよろしく、ギル」
此処から先、相当しんどい事が待っているだろう。きっと、魔女を探すことは容易ではない。この世界に住む誰もが魔女を求めて動いている…当たり前だ、要するに何でも願いを叶えてくれる人間がいるのだから。縋り付く人なんて五万といる。
(それでも、この青年に頼ってみたいと思った)
「……っよろしく!アオ!」
ーーーー力強く差し出された手を握り返された時、また新たな風の流れが、この街に流れ始めたように感じた。