心臓




部屋から出ると、入り口からやけに騒がしい音が聞こえてきた。数人、いや2桁はいるか。
……こんな帝都のど真ん中にある店の前に、よく人数を集めたものである。

最もそれらが何者であるかは見当もつかないため、この先に行ってみなければ追い払えるのかは微妙なところだ。


「どうすんだよ、これで追い払えなかったら」

「その時はその時でしょ」

「はあ?そんな簡単に諦めるのかよ、」

「違うって。…ちょいとばかりやり合うだけだよ、その時は」


まるでなんて事もないようにそういうアオにギョッとしたが、本当に刀を抜きそうなアオに何と無く納得してしまった。

(…保持者ってだけなのに、なんでこんな説得力あるんだか)

本当に不思議な女である。



「ほら、一仕事行くよギル」


考え込んでる間にもバンッと肩を叩かれ、現実に引き戻された。…会って間もないが、ほんとこーゆー時だけ、頼もしい相方である。







ーーーだがしかし、先程の意気込みはどこに行ったのか。

ギル、アオの順番で店の入り口に出てから見えた光景に、二人は思わず愕然とした。


風に揺らぐオリガス特有の騎士のマークが描かれた、大層な旗。
質屋に物を売りに来たとはどう考えても思えない、槍を持った男が数人と刀を拵えた男数人。
そして真ん中に立つ深い蒼のコートを羽織った男が、こちらをじっと見つめていた。


「ーーーっ!」

反応したのはギル。
力強い金色がこちらを見つめる瞬間、フードを深く被り直したが、もう誤魔化せはしないだろう、明らか目が合っていた。

(…っなんでこんなとこにいんだよ!)



真ん中に途轍もない存在感で立つ男の横で、一人の眼鏡をかけた男が言った。

「カルラ様、この女ですよ。
戦闘要員No.40001の、異端者『アオ』」


「……コレが『刀の天才』か」




艶やかな黒髪を後ろで一本に縛っている、明らか偉そうな男が鋭い金色の双眼で、アオを冷たく見下ろしていた。





「ーーーへえ、」


ビキッと顔が引きつる音を、隣に並ぶ顔をすっぽりと多い隠しているギルのみが、感じ取っていた。


(ほんっとに、この国の人間は会って早々失礼な奴ばかりだなっ!!)



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