心臓
そこからはやけに静かな時間だった気がする。
心臓の力を無効化する手立てとなる、魔女の存在。ずっと彼女を探し求めて国中を歩いていること。そしてその旅の途中で利害が一致したギルと共に、噂で聞いた鏡を、今日この場で確かめにきたこと。(勿論、ギルの身分も伝え済)
細くはないがざっくりと伝えた。
…特にグルーリーが反応したのは私が10億分の1の確率でこの身に宿す、心臓について打ち明けた時だっただろう。
「ーーーと、まあこんな感じで、魔女を探しています」
「…正直なところ、驚き半分となんとなく分かってた、っていうのが半分。貴方、心臓の保持者なのね」
あからさまに興味を持ったようで、彼女の目線が私の爪先から天辺までを見据えていた。
こーゆーのは慣れているが、隣で怪訝そうなギルの雰囲気が伝わってくる。
優しい青年だ、本当に。
「でもその力があれば、国なんてどうとでもできるでしょうに。それこそ、隣国のエキストスとかーーー」
「私はこの心臓を侵略に使うつもりはない。
…言ってませんでしたね、私はこの力でかつて過ちを犯しました」
「過ち?」
「はい。…だから私は人を守るために刀を振るいますよ」
その為にはまず、禍の元凶である心臓の力をなんとかしなくちゃいけないのだ。
過ちに関してここで話すことは何もないし、彼女達には何も関係ないことなのだから、こんな所でさらけ出すだけ無意味だろう。
握り締めていた手を強く握り直し、頭をよぎった冷たい過去を抑えつけた。
(ーー犯した罪は余りにも大きかった)
「…とりあえずこちらの手の内はそれくらいですかね」
貴方の番ですよ。
アオの挑戦的な瞳がグルーリーを捕えた。