弱虫なボク~先生と生徒の距離~
額から流れてくる汗。


行き交う人の中に居た。


そこは、いつもと同じで、信号待ちをしている車から漏れる大きな音が雑音に聴こえてくる。


街の賑やかさに、いつもならイライラとしてしまう僕だけど、今日は、雑音すら何とも思わない。


いや、そこまで気持ちが向いてないだけかもしれない。


息を切らし、苦しんでいた僕の胸の鼓動は、信号待ちをしている間に静かに落ち着いていた。


でも、まだあの先生の瞳は頭に残ったままで…。


2度、3度、頭をブルブルと横に軽く振ってみても、そんな簡単には離れてくれない。


頭についた小さなゴミなら、風が吹くと、すぐにどこかへ飛んでいってくれるのに。


信号が青に変わると、目を閉じて、深呼吸。


そして、青に変わった途端に動き出す人の群れの中、僕は握りしめたままだった携帯に目を向けた。
< 189 / 222 >

この作品をシェア

pagetop