弱虫なボク~先生と生徒の距離~
「僕です…」


沈黙に耐えきれなくなった僕は、右腕をスッと天井に向けて挙げた。


自分でも分からないぐらいに、それは自然に……


沈黙を続けていたクラスメート達は、僕の冷静ないつもの声に反応し


僕の方に、何人かは顔を向けた。


「井手君…か」


先生の視線は、今だけ僕に向けられ独占しているような錯覚に陥る。


「後で、ゆっくり井手君に話を聞くわ」


先生は、そういうと教卓の上に置いた出席名簿を再び手に取った。


後で?


まさか…2人っきりで?


また激しく心が揺れ始めた。
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