弱虫なボク~先生と生徒の距離~
「今、私が言った事は忘れて…」


寂しそうな瞳を一瞬に、いつもの瞳へと変化させ、そう僕達に告げた。


高田香奈は、ハイと答えていたが、僕は気になって仕方なかった。


大好きな先生の過去に一体何があったのだろう…。


寂しそうな瞳になるぐらいなんだから、



「なんか…変な空気になっちゃったね」


先生は、さっきまでの表情が嘘のようにニコっと笑い、


「今日はもういいわ。とりあえず、井手君は、ちゃんと練習出なさい!」



そう最後に告げると、気をつけて帰るようにと先生は僕達を解放してくれた。


「失礼しました」


軽く頭を下げて、生徒指導室から廊下へと足を運んだ。


窓から外を見つめる先生の背中がなぜか悲しそうに映り、


カーテンもなぜか、寂しげに風で揺れている。
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