君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
小学生の時だ。
発表会で劇を披露することになったうちのクラスに、肌が真っ白だからという理由だけで主役の白雪姫に抜擢された内気な女の子がいた。
演技リーダーだったあたしはその子のために、その子のセリフを丸暗記するほど練習に付き合ってあげた。
結果、劇は大成功。
「あんなに長いセリフを覚えるなんて凄い!」と先生にもクラスメイトにも絶賛され、その子は一躍クラスの人気者になった。
あたしは、蚊帳の外だった。
中学生の時だ。
大阪の学校から転校してきたイケメンがクラスにやってきた。
雑誌のモデルかっていうくらい綺麗な容姿に、秒で虜になったあたし。友達とその人の話題を口にしてははしゃいで、非公認でファンクラブまで作り。
あたしは、どうにかその人とお近づきになりたかった。
けれど3ヶ月後、その人は隣りのクラスの美人と付き合ったと噂で聞いた。
あたしは所詮その他大勢のモブキャラクターにすぎなくて。
結局、彼の視界に映ることすら叶わなかった。
……あたしの人生なんて、そんなものだ。
所詮、誰かの引き立て役にしかなれない。
人気者になった色白のあの子。
隣りのクラスの美人なあの子。