君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
――翌日になって。
1時間目から体育なんて憂鬱の極みでしかない。
唯が風邪で休んだ今日、朝から奈々実と美織の3人でそんなことを話していた。
のに、いつもなら体育が始まる五分前にはいる先生がいなくて。
やがて、急きょ自習になったと担任の先生が知らせに来た。
担任の先生も先生でプリントを置いて職員室に行ってしまって、慌ててコピーしたであろうそれは十五分もあれば解ける量と内容だったものだから、すでに教室は授業中らしからぬ騒がしさだった。
ちらりと視線を動かすと、亮太もまた、いつも一緒につるんでいる友達と談笑しているようだ。
あたしも早く切り上げようとシャーペンを握る。
……と、
「んで? どーなんだよリョータぁ。 噂のあの子とのその後はさ!」
瞬間耳に入ってきたそれに、あたしは弾かれたように顔を上げた。
亮太の左隣り――欠席の唯の席に座る男子が、ニヤニヤ笑いながら亮太を小突いている。
「どうだ? 告ったか? ん?」
「ほ、ほっとけよバーカ。 お前には関係ないって」
「なァに言ってんだよ那須亮太くんよ! 俺たちも協力してやるからさ! な!」
「……いや、いい」
少し頬を赤くして、顔を背ける亮太。