君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける







聞きたくない、聞きたくなんかないよ。




亮太の好きな人を知ってはいても、それを聞いてしまうと現実を叩きつけられるようで。




今のあたしには耐えられそうにないから。






そもそも、亮太の好きな女の子のタイプってなんだろう。今まで、どんな人を好きになったんだろう。




髪の長さは? 長め? 短め?




おしとやかな子とか? 頭がいいとか?




綺麗系? かわいい系?






そうやって思い描けるだけの女の子のタイプを頭に浮かべてみれば、なんの取り柄もない平々凡々を体現したような自分に溜め息が出る。




ひとつでも何か誇れるところがあればまだ、変わったかもしれないのに。






そうこうしている間にチャイムが鳴って、あたしはまた、不毛なことを考えていたことに気付いた。




……彼の好きな人は、あたしではないのだ。




変わるも何も、その事実は聞いてしまった以上覆せない。





あたしに見えてるこの空の青は、一体どんな人間が見ている色なんだろう……。









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