君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
今日の星座占いは一位だったのに。あの番組の占いは明日から信用しないんだから、と心の中だけでため息をつく。
見たところ手ぶらだし、適当に話を合わせていれば満足してどっかに行ってくれないかな。
だが、怪しいひとに『余命が長くない』なんて言われたらちょっとくらい気になってしまうもので。
あたしは思わず問うていた。
「あの、なんであたしが? そんな深刻な病気なんて持ってませんけど」
「余命あと僅か、と言われて真っ先に浮かぶのは確かにそれでしょうね」
でもね、と男が続ける。
「あなたがたくらいの年代の死因の第一位、なんだかご存知です?」
はぁ、あたしは気の抜けた声で相槌を打った。
「自殺ですか?」
「不慮の事故です」
「ふりょの、じこ……?」
「考えても見てください。あなたが今朝牛乳を飲みながら学校に出かけるまで見ていたニュースに、事故の報道が何件ありましたか?
或いは、テレビ欄だけ目を通してお父様に手渡された新聞の中に、事故の記事が何件載っていたかご存知ですか?」
「……そんなの知りませんけど」
あたしがそう返すと、男は少し考えるような素振りを見せた。