君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
「ふむ、あまりピンときませんか」
なら話を変えましょう。
ヤツは顔をずいと近付けてきた。
間近で見ると、男にも女にも、若いようにも、そこそこ年をいっているようにも思える。
美白を通り越した白すぎる肌、特徴らしい特徴のない無個性な顔立ちには、うすら寒いものを感じた。
「国内の一日平均の事故死者数は約十二人、大体二時間に一人の割合で亡くなっている計算になります。どうです? 少しは他人事ではなくなりましたか?」
「いや、なんとも……」
言葉を濁しながら、あたしは助けを求めるように視線を泳がせた。
アブなそうな人だとは薄々分かっていたが、触らぬ神に祟りなし、君子危うきに近寄らず、変に首を突っ込まないほうがよかったと内心舌打ちをする。
あの時、面倒でも適当に流して迂回すればよかったのに……あたしのバカ。
その時だった。
たまたま近くを通りがかった親子連れと目が合った。
母親の方はあからさまに避けようとしていた。(まぁ反対の立場だったらあたしも同じような態度をとるだろうから何も言えない)
が、園児服を着た子どもがあたしを指さしながら言う。