君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
人懐っこそうな顔されても困るんですけど。
てか、こんなに説明してもらって悪いけど、やっぱりどーにも腑に落ちないし。
「あたしの寿命があとわずかで、死神が現れて……って。なんなの、その都合の良さは」
はっ、と鼻で笑ってやった。
すると、男はニコッ。可愛らしく首を傾げて、
「この世は都合良く出来ています」
なあんて、あたしの返しにスッパリと返した死神。
あたしは薄く笑みを浮かべた彼を少し見つめて、それから目を逸らした。
「――意味わかんない」
昨日の言葉を思い出して吐き捨てるように呟いた時だった。
「何が分からないの? 由奈ちゃん」
隣りから声を掛けられ、ハッと我にかえる。
そうだ、今は放課後の教室で唯につきっきりで勉強を教えてもらっているところだった。
見ると、首をかしげている唯の姿があった。
あたしは誤魔化すように笑いながら、広げっぱなしの。
さっきからちんぷんかんぷんで解けない数学のテストのやり直し問題をシャーペンの先で示す。