君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
「今年の夏も、きっと去年と変わり映えしないねー」
「ふふ、そうだね。去年は『来年は絶対カレシ作るぞー!』ってみんなで宣言したけど、結局誰もカレシいないし」
くすくすと笑う唯。
あたしは少し複雑な気持ちになったけれど、それを隠すようにわざと明るい声を出す。
「あーあ、どこかに出会い落ちてないかなー!」
すると、唯の表情がたちまち花を咲かせたようにパアッと明るくなった。
「好きな人ができたら教えてね。わたし絶対応援するよ! 由奈ちゃんの良さはわたしが保証する!」
唯が胸の前でぐっと拳を握る。
少し頬を高揚させた、無垢な笑顔。
そんな唯のまぶしさにあてられて、あたしは、消しても消しても消えない汚れがどんどんと心に溜まるのを感じていた。
「……ありがとう、唯。応援してね」