君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
その先にちょうど、亮太がいた。
隣に座っている唯と話し込んでいるように見える。
二人とも時折笑顔を見せているところから、楽しげな雰囲気が感じ取れた。
少々うるさいクラスの喧騒の中では、話の内容までは分からない。
と、亮太が教科書に挟んでいた紙を取り出し、一緒に覗きこむように見始める。
肩が触れ合うくらい、近い距離。
あたしの胸の柔らかい部分を何かがぎゅっと締め付けてきた。
あぁ、あたしの前じゃないとあんな風なんだ。
そう思った瞬間、酷く汚いものが心の中に音もなく積もっていく。
身勝手極まりない、どろどろとした気持ち。
イヤだとか、話さないでとか、
――何よそれ。
あたしは亮太の何でもないのに。
亮太の恋を応援するって決めたのに。
なだめるように言ったそれがまた、鋭利な刃物となってあたしの心を深くえぐる。
臆病なあたしは、サッと目を逸らした。