君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
「それはそうと! おゆ、何か進展はないの〜?」
突然飛んできた声に「へ?」と顔をあげた。
美織の隣に座る奈々実が、目をキラリと光らせてあたしを見ている。
「し、進展って……」
「んもう。あたし達がこーんなに頑張ってるってのに。この前も話してたじゃん、亮太と! 何かラブハプとか起こったりさ!」
ほら! ほら!
机に身を乗り出して、さあ言え! と言わんばかりに迫ってくる奈々実と美織。
さて、どうしたものか……。
困惑する半面、良い機会かもって思った。
と、授業の開始を告げる聞き慣れたチャイムが鳴った。
先生が入ってくる。
それを見た亮太が号令を掛ける。
声に合わせて立ち上がり、一礼。
そして座るという、もういい加減条件反射的に体が動く流れの中に紛れて、あたしはこそりと言った。
「進展も何も、あいつ、好きな人いるんだってさ」